顎 関 節 治 療
Temporomandibular joint treatment
顎には、何らかの要因によって運動障害が起こることがあります。そのときに現れるさまざまな症状の総称を『顎関節症』といいます。
顎関節症の主な症状には顎関節痛(顎が痛む)、関節雑音(顎を動かすと音が鳴る)、開口障害(口を開けにくい)などがあげられます。しかしこれらの症状は、誰もが同じように現れるとは限りません。
顎が痛むといっても、関節自体が痛む場合もあれば、関節の周辺組織や筋肉が痛む場合もあります。また、顎を動かしたときに鳴る音も、「カクカク」「ジャリジャリ」「ミシミシ」などさまざまです。
そしてこれらにともない、頭痛、首の痛み、肩こり、腕の痺れ、腰痛、耳鳴りなどの症状が現れることがあります。
このようにさまざまな症状が複雑に絡み合っているのが顎関節症の特徴といえます。
不正咬合
一般的には、不正咬合による噛み合わせの悪さが顎関節症を引き起こす原因になるといわれています。不正咬合を放置しておくと、顎の位置が少しずつずれ、顎の骨や周囲の筋肉に大きな負担がかかり、顎関節症が誘発されてしまうのです。
しかし本来注目すべき点は、『不正咬合』ではなく、『不正咬合を引き起こした原因』なのです。
人間の体は、『伸筋』(主に腕や脚などを伸ばすときに使う筋肉)と、『屈筋』(主に腕や脚などを曲げるときに使う筋肉)がバランスを保つことで直立姿勢がとれるようになっています。そして顎周辺の筋肉は、両者の連結点となっています。
つまり、筋肉のねじれや骨格の歪みなどによって体のバランスが崩れていると、顎に直接影響を及ぼしてしまうことになります。たとえば、顎と離れた場所にある足の筋肉のバランスが崩れた場合、全身の筋肉を介して顎に影響を及ぼすということも珍しくありません。 顎関節治療においては、顎に悪影響を及ぼしている筋肉のねじれや骨格の歪みを改善することが最も重要なのです。 当院では、このように全身のバランスから考えて顎関節症治療を行なっています。
歯ぎしり
不正咬合ではないのに顎関節症になっている方は、就寝中に無意識に歯ぎしりを行なっていることが考えられます。過度な歯ぎしりは、覚せい中の数倍の力で噛み続けているのと同じです。そのため就寝中に筋肉が疲労し、痛みや顎関の障害などが生じてしまうのです。
歯ぎしりの原因ははっきりとは判明していませんが、噛むことは人間の脳に快楽をもたらすため、脳にとっての生体防御反応として位置づけられます。
つまり、覚せい中に感じるストレスを、就寝中に歯ぎしりを行なうことで発散していると考えられるのです。しかし過度な歯ぎしりは、顎関節症だけでなく、歯のすり減りや歯周病を引き起こすこともあります。
予防法としては、就寝前にリラックスする、頬や顎の筋肉をマッサージする、歯科医院で製作したマウスピースを装着する、などがあげられます。
顎関節症の原因は、上記の不正咬合や歯ぎしり以外にもさまざまな原因が考えられるため、治療法はその原因に対応したものを選択する必要があります。
薬物療法
顎関節治療としての直接的な効果はありませんが、痛みに耐えて力んでしまうことで、顎周辺の筋肉がさらに緊張してしまうので、薬を服用することで筋肉の緊張を和らげる方がよいと考えられます。
運動療法 筋マッサージ
顎関節周辺の筋肉を押して、凝りを感じる部位を中心に揉みほぐし、筋肉の緊張を緩和します。
生活指導
頬杖、うつぶせ寝、片側ばかりでの咀しゃくなど、日常生活でつい行なってしまう顎関節に負担をかけるようなクセを禁止します。
スプリント療法
顎関節症の治療法のなかで最も一般的な方法で、『スプリント』というマウスピース状の装置を使用します。
詳細は『矯正歯科』ページ>『スプリント療法』でも述べているので、そちらをご覧ください。
外科手術
外科手術が必要となるのは重症の方のみで、顎関節症の患者さまのなかでわずか5%程度です。
多くの場合、全身麻酔下で手術を行ない、手術後もリハビリテーションが必要となります。